石川県土地改良事業団体連合会 水土里ネットいしかわ

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遺伝子組み替え作物(GMO)

 世界的な人口爆発や高齢化社会に伴う食料危機が懸念される中、食品産業において、食料の増産、食品加工の効率化が図られているところです。

 その一つとして、遺伝子の組み替えによる食品の開発がなされています。

 まず、「組み替えDNA技術」といって、遺伝子の本体であるDNA(デオキシリボ核酸)に人為的な操作を加え、ある生物の遺伝情報を別の生物のDNAに導入し、その生物に新たな性質を与える方法がとられますが、これによって作り出された新種の農作物を「遺伝子組み替え作物」(GMO:geneticallymodified organism)といいます。

 そして、それ自体、またはそれを原料とする食品を一般に「遺伝子組み替え食品」といいます。 この分野において進んでいるアメリカでは、1994年頃から害虫に対して抵抗力があるトウモロコシやジャガイモ、また特定の除草剤の影響を受けずに生息する大豆やナタネ、日持ちの良いトマトなどが次々と商品化されており、最近では、脂肪酸の含有量が高い油糧作物の開発も進んでいます。

 日本においても、96年以降、大豆やナタネ、トウモロコシなどの品種改良が行われ、99年2月現在、22品種の安全性が確認されています。 安全性の確認の手順としては、まず開発者が厚生大臣へ申請し、厚生大臣から専門家により構成されている食品衛生調査会へ諮問します。そこから食品衛生調査会バイオテクノロジー特別部会へ審議を依頼し、安全性が確認されると、厚生省から申請者へ適合性確認の通知が来る仕組みになっています。

 確認のポイントとしては、挿入する遺伝子の安全性、挿入遺伝子により生産されるタン白質の有害性の有無、アレルギー誘発性の有無、挿入遺伝子が間接的に作用し、他の有害物質を生産する可能性の有無、遺伝子を挿入したことにより成分に重大な変化を起こす可能性の有無などがあります。

 しかし、遺伝子操作という未だかつてない取り組みに対し、不安を持つ人もいることは確かで、このため店頭に並んでいる製品を一般消費者が区別する目安として2001年4月から表示の義務付けが施行されることとなりました。

 対象となるのは豆腐やコーンスナック菓子など、一般消費者向けに販売され、かつ厚生省のガイドラインによる安全性評価を経た農産物か、それを原料とする加工品30品目となります。

 ただし、しょう油や大豆油など、加工の段階で遺伝子やタンパク質が除去、分解されるなどして、製品段階ではその判断が難しいものについては、表示不要とされましたが、国内消費の90%以上を占める大部分の食品がこれに当たるため、もう少し検討すべきという声もあります。

 このように、まだまだ課題を残している遺伝子組み替え食品ですが、国際的な取り組みとして、先日千葉県で国際会議(コーデックス委員会)が開催されました。

 会議では、安全性の確立を全面的に肯定するアメリカと、まだまだ考慮すべき点があると慎重な態度を見せるEUの間で意見の対立があり、国際的な安全基準の確立は難しい状況ですが、今後どのような展開方向を見せていくのか注目を集めています。

(機関誌 平成12年4月号より)