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環境保全型農業
農業は、私達に食料を提供してくれるという役割に加え、環境と最も調和した産業として豊かな国土の形成と保全に貢献してきました。やがて来る21世紀に向けて日本の農業がこれらの役割を十分に発揮した上で、国民が安心できる食生活を送ることができ、心のやすらぎが得られるような農村づくりを目指していかなければなりません。
日本は降水量が多く森林にも恵まれていることや、稲作農業が中心的に行われてきたことで、畑作農業において、盛んに行われている欧米諸国と事情は異なりますが、最近の農産物の生産において化学肥料、農薬等の多量の使用、家畜ふん尿の不適切な処理による環境汚染という問題が生じており、その解決に真剣に取り組まなければならない時期に来ています。
そこで、平成6年4月に国が一つの方法として考え方を指示した「環境保全型農業」が今重要な役割を果たそうとしています。
これは、農業の持つ物質的循環機能を生かし、生産量はそのままで、環境に悪影響を及ぼすような肥料や農薬は使わない持続的な農業を目指すもので、いくつかの農法がありますが、いずれも殺虫剤、殺菌剤、化学肥料を極力使用しないことや、規模拡大に伴う弊害を克服し、環境に配慮した農業を目指すという技術的方向性では一致しています。
そのなかでも、よく耳にする有機農業に目を向けてみると、化学肥料ではなく堆肥を使用した環境保全型農業といえますが、堆肥をやり過ぎれば地下水の汚染の原因になる恐れがあるので、気をつけなければなりません。
そして、一つ知っておきたいのが、その有機農業によって生産された農作物の定義づけです。よくスーパーなどで、「有機野菜」、「有機無農薬」などという表示を付けた野菜などが売られていますが、その基準は生産者それぞれによって多少異なることがあるので気をつけることが必要です。「有機農産物」というのは、「化学合成農薬そして化学肥料の両方を3年以上使用しない栽培方法」のことで、農薬を使っていないので有機ということではないのです。では、消費者が購入時にどう留意すればよいかというと、国のガイドラインに基づいて定められた生産管理要領による「農林水産省ガイドラインによる表示」があるので、それを目印にすれば良いのです。
具体的な対策としては、「土づくり」において、完熟堆きゅう肥の施用、稲わら還元、「施肥」では、土壌によって肥料の量を調整したり、投入量の削減を図るといったこと、また「防除」では、天敵を使った害虫駆除、抵抗性の品種の導入といった取り組みが考えられています。
しかし、これらの方策をとった場合、生産資材の節減によって労働力の増加、コストの上昇、単収や外観の低下といった経営面でのマイナスが生じることが考えられますが、先進的な技術や、経営方式の導入によって、このようなマイナスの要素がなるべく生じないように対応することが重要です。
その実現には、消費者一人ひとりの理解と努力が必要で、それが得られれば、環境保全型農業の一層の推進が期待できます。県内での取り組みはまだ一部に限られてはいますが、これから少しずつ普及していくことが期待されます。
(機関誌 平成9年11月号より)