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環境ホルモン
環境ホルモンとは、科学物質のことで、正式には、「外因性内分泌攪乱科学物質」といいます。これは、生物の体内に取り込まれると、女性ホルモンと同じ作用を引き起こし、本来のホルモンバランスを崩すことからそう呼ばれています。その定義については、特に定まっていませんが、1997年にアメリカで行われた会議において、「生体の恒常性、生殖、発生、あるいは行動に関与する種々の生体内ホルモンの合成、貯蔵、分泌、体内輸送、結合、そしてそのホルモン作用そのもの、あるいはクリアランス、などの諸過程を阻害する性質を持つ外来性の物質」(環境庁資料より)とされました。
現在、環境省では内分泌攪乱作用が疑われる科学物質を67種類あげていますが、さらに1,000種類以上の科学物質がその疑いがあるとされています。身近なものは、別表に挙げたとおりですが、実験的に証明され生殖機能障害が認められているのは、農薬のDDTと船底塗料の一成分として使われた有機スズ化合物(現在日本では生産・消費が全廃されている)のみとなっています。
生殖異常が認められた国内の具体的な例としては、多摩川のコイ38匹のうち11匹が精巣が極端に小さくなり、さらには卵巣も持ち合わせた雌雄同体魚となっていたというものや、瀬戸内海の海岸では、イボニシ貝の雄性化、個体数の減少といった現象があります。また、マウスの実験では、メスが妊娠しにくくなり、子宮がんや膣ガンができやすくなる。オスは精子数の減少や無精子、前立腺の増殖などの異常が認められました。
こういった「環境ホルモン」は、体外に排出されにくく、将来、私たち人類も生殖機能に障害が起こるといったことも十分懸念されます。
環境省では、こういった事態を改善すべく1997年に研究班を設置し、調査・研究について検討を実施。1998年には、具体的な対応方針等を「環境ホルモン戦略計画SPEED’98」として取りまとめ、2000年に新しい知見等を追加・修正し公表しています。
私たちも、正しい知識を身に付けるとともに、環境に優しいライフスタイルを心掛けなければならないのではないでしょうか。
(別表)「環境ホルモン」の疑いがある物質
ビスフェノールA | ポリカーボネート製の食器や缶詰の内側の塗料に使用されている |
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フタル酸化合物 | プラスチック製の食品パッケージの素材としてパック容器やセロハン、ラッカーなどに使用されている |
PCB | 電化製品やノンカーボン紙に使用された(「カネミ油症事件」で禁止されたが、環境や体内に大量に残留) |
ダイオキシン | 塩化ビニール類を燃やした煙に含まれる |
(機関誌 平成15年2月号より)