石川県土地改良事業団体連合会 水土里ネットいしかわ

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公的年金制度改革<その3>

 今回は、土地改良団体が加入している農林年金について説明することにします。

 農林年金は、昭和34年、農林漁業団体における人材確保を目的に、同様の業務に従事していた市町村役場の職員並みの年金をめざして、厚生年金から分離・独立しました。そして、数次にわたる制度改正により、公務員並みの年金水準を確保してきました。

 財政の状況は、当初の職域拡大の努力等により安定的に推移してきましたが、昭和61年以後は、年金受給者の増加や基礎年金拠出金等の負担の影響により、他の制度に比べて財政が厳しくなってきました。特に最近では、組織整備の進展により組合員数が減少したり、超低金利の影響をうけて、将来の財政面・負担面で厳しさを増すことが見通されています。

 また、平成8年の閣議決定(公的年金制度の再編成の推進について)では、農林年金については、「財政再計算時ごとに、農林年金制度の位置づけについて検討を行う」こととされており、この閣議決定を踏まえて、平成11年の次期財政再計算期には農林年金制度の長期的運営のあり方について、検討する必要がでてきました。

 このため、具体的な取り組みの第一歩として、去る6月23日に、オール農林漁業団体で構成する「農林年金制度対策本部」において、農林年金制度の長期的運営のあり方についての「中間整理」が取りまとめられ、(1)政府の公的年金制度再編成の閣議決定の方針に沿って対応すること、(2)厚生年金保険との早期の統合をめざし、本年11月を目途に具体的検討を深めること、(3)年金審議会等政府関係機関への対応や関係法案の国会提出に向けた行政との協議等の準備を進めることの3点について方向づけされました。

 検討に当たっては、これまで通り独立して存続するケースと、厚生年金と統合して基金を構築するケースの2つが考えられますが、現在の世代間扶養という財政方式のもとで組合員数の減少が見込まれる状況下では、健全財政の維持や費用負担の平準化等を考えた場合、厚生年金との統合をめざしていくことが望ましいと考えられます。

 この場合のメリットとしては、(1)組合員数減少に伴う掛金負担の増大のリスクを相当程度回避できる、(2)割高となっている基礎年金拠出金の負担が緩和される、(3)職域年金部分を加算部分として維持することが可能となる、(4)加入範囲を自由に決められることから、協同会社などの職員にも加入の道が開ける等があげられます。

 一方、課題としては、基金は事前積み立て制度のため、予定利率等を慎重に見込み、確実に財源の手当てをしていかなければならない等があります。

 農林年金制度対策本部では、今後、厚生年金との統合及び農林年金基金(仮称)設立に向けた条件の整備等について検討を深め、組織協議を踏まえて、11月を目途に「最終整理」をまとめることとしています。

(機関誌 平成10年9月号より)