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コンクリート構造物の欠陥と劣化<その1>
昨年、コールドジョイントが原因でコンクリート塊が通行中の新幹線を直撃する事故がありました。これをきっかけに、全国でトンネルの他に道路の高架などを含めた緊急点検が実施され、本県においても、詳細な点検が行われているところです。
そこで、今回はコンクリート構造物の欠陥と劣化について、次回はコンクリート構造物の補修と補強について説明していきます。
まず、コールドジョイントとは、コンクリートを機械で流し込む作業の途中で、機械のトラブルなどで一時的に作業を中断せざるを得なくなった場合に、最初に流し込んだコンクリートと後で流し込んだコンクリートの固まる時間に差が生じてしまい、あらかじめ計画していなかった箇所に不良打ち継ぎ部分が生じる現象を言います。
一般に許容打ち継ぎ時間は、夏期で約2時間、冬期で約4時間と言われていますが、この間にコールドジョイントが生じると、レイタンスと呼ばれるセメント粒子の薄い層が残り、構造物の耐荷力、耐久性、水密性に悪影響を及ぼす可能性があります。
そこで、補修の方法としては、先に打ったコンクリートの表面のレイタンスやゆるんだ骨材などを取り除き、打ち継ぎ面に散水して十分に吸水させてからモルタルを敷いて、その上にコンクリートを打ち込む作業を行っていきます。これで強度的にもほぼ一体化することが解っています。
次に、劣化の現象として中性化という現象がありますが、これは、硬化したコンクリート中の水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素と化合し、炭酸カルシウムに変化することによってコンクリートのアルカリ性が失われることを言います。これが鉄筋部分まで進むと錆びが生じ、それに併せて膨らみやひび割れが発生し、空気に触れることでさらに進行します。
また、コンクリートの施工不良箇所やひび割れなどがあると、そこで中性化が局部的に進行するといったこともあります。
この中性化を防ぐには、水セメント比(生コンクリートやモルタルのセメントペーストに含まれる水とセメントの重量比)を小さくしたり、コンクリートを打ち込む時に十分に締め固めるという方法をとり、空隙を極力少なくすることが考えられます。特に水セメント比については、配分の割合によってコンクリートの強度や作業のしやすさ、コスト面などに大きく影響してくるので、十分に注意する必要があります。
この他にも、アルカリ骨材反応、凍害、塩害、ジャンカ(豆板)等がありますが、水セメント比、骨材を適切に選定し、十分な締め固めと養生を行うことで大半が解消されます。
以上のことに注意して、耐久性かつ美観を備えた構造物を造っていきたいものです。
(機関誌 平成12年2月号より)