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コンクリート構造物の補修と補強<その2>
前回のコンクリート構造物の欠陥と劣化に続いて、今回はその補修と補強について説明します。
どのくらいのひび割れ幅であれば補修が必要かということは、原因や対象構造物の種類が多様なのでいちがいに決められません。しかし一般には、3.0mm以上だと構造的な欠陥を伴っている恐れがあり、抜本的な補強が必要で、0.05mm以下なら水が漏れないと言われています。
コンクリート構造物の補修は、その原因によって補修方法が異なることから原因別に示します。
1.中性化・塩害の補修
中性化・塩害の補修は、塩素イオンの有無を除いては基本的に同じであって、 劣化の進行状況に合わせた方法で行います。劣化の進行が軽微な場合は、透気 性の小さい被覆材をコンクリート表面に貼って、また劣化が鉄筋にまで進んで いる場合は、鉄筋の腐食を抑制するために、透気性・透水性がともに小さい被 覆材を貼って進行を止めます。鉄筋の腐食が進んでコンクリートにひび割れや 剥離が生じている場合は、そのコンクリートを取り除き、鉄筋の錆をよく落と したうえで、モルタルやエポキシ樹脂モルタルなどを充填してから被覆材を貼ります。
2.アルカリ骨材(アルカリシリカ)反応の補修
アルカリシリカ反応による劣化の補修の基本は、外部から水が補給されなくすることです。ひび割れ注入工法、表面処理工法、充填工法などの補修工法があります。
劣化は開始期、進展期、停止という経過をたどるので、補修対象がどの時期にあるかを判断することが、補修材料の選択・工法の選定には重要です。
3.化学的腐食の補修
腐食物質を特定した後、下地処理、鉄筋防錆処理、断面修復、表面処理の手順で行います。下地処理では、腐食箇所をすべて取り去り補修面に異物がないよう十分に清掃します。鉄筋は錆を完全に取り去り、防錆剤を塗っておきます。断面修復や不陸修正には、左官工法や型枠による打ち継ぎがあります。補修材としては、防水性、耐酸性、耐摩耗性に優れるレジンモルタルが主に使われ、湿潤状態や熱膨張性がコンクリートと同等であることが求められるときは、ポリマーセメントモルタルが使われます。表面処理では、腐食物質に応じた耐食性の被覆材を選定してライニングを行います。
コンクリート構造物のひび割れ状況によっては、構造物の重要度や環境条件によっても異なりますが、最悪取替えが必要になることもあります。そのような事にならないように定期的に点検を行い早期発見に努めたいものです。
(機関誌 平成12年3月号より)