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里山
今、人々の暮らしに密着して来た自然の宝庫とも言える「里山」が失われようとしています。
里山は、奥山と都市の間にある野山のことを言い、以前、薪・炭などを使う生活をしていた頃は、人が日常的に出入りして生活の中に溶け込んだ存在でした。
里山を別の視点から見てみると、余暇を利用した社会活動(ボランティアなど)、家族のふれあい、趣味を楽しむ場など、“豊かな暮らしのシンボル”ともなっていたと言えます。ヨーロッパなどの都市近郊には必ずといっていいほど大きな公園が設けられており、常に生活に潤いを与えています。わが国の里山は、いわば生活から生まれた自然の公園であり、今改めてその重要性が見直されています。
また、里山は単にみどりとしての景観だけでなく、災害から人々を守り、豊かな水を提供するといった役割もあり、祖先が大切に守り育ててきた里山を引き続き守って行こうという動きが活発になっています。
最近、県内で新しく取り組まれているものに、農村生活空間保全事業の「農村空間博物館」があります。これは、地域が持つ農業に関わりのある歴史的資源を発掘し、農業文化と農村の伝統や景観等を地域全体にわたって復元しようというもので、まさに里山の保全ということにおいては、理想的な計画と言えます。また、今月末には、県の自然保護課を中心に「夕日寺・雑木林わくわく体験活動」で、下草刈りや間伐、キノコ、ドングリ採集などを行い、山の自然に触れてもらおうという企画が予定されています。
全国的に行われているものでは、「里山トラスト」があります。これは、ゴルフ場やリゾート地乱開発から里山を守るため、土地や立木を買ったり土地を借りたりして、森林や農山村の人々と信頼関係を深めていく運動のことを言います。
これによる波及効果として、住民がゴルフ場やリゾート計画に対して意見を言いやすくなる、土地を売ることに反対し孤立している地権者への経済的な支援となる、また、里山や雑木林の自然を破壊せず、生産や環境教育の場として生かしていく方策を山林地主と都市住民が共に考えていく母体となり得る、ということが考えられます。
今後は、立木などのオーナーをより広い範囲から募集するための宣伝方法や、全国で行われているこの運動をネットワーク化するための情報網をどう作って行くか、また、乱開発を阻止した後の運動の在り方などにどう対処して行くかが課題となっています。
こうした様々な取り組みがありますが、急激に減っていく里山をその地域に住む人だけでなく、都市住民も一緒になって考えて行かなければならないことと言えます。
(機関誌 平成11年11月号より)