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セーフガード
1960年代までは、日本で消費される野菜はほとんどが国内で生産されていましたが、70年代から保存のきく玉ネギなどの輸入が始まり、その後90年代にもなると冷蔵コンテナや航空輸送など輸出手段の発達に伴い品目・量ともに急増してきました。その一番の原因は価格の安さで、これにより国内産地は大きな打撃を受けることとなりました。
このような輸入の急増によって国内産業に損害が発生した場合、輸入抑制のために発動される緊急措置がセーフガードです。
セーフガードにはGATT(関税貿易一般協定)第19条のセーフガード協定に基づく一般セーフガードと、WTOの農業協定第5条に基づく特別セーフガードがあります。
一般セーフガードは、農林水産物を含むモノ全般を対象品目とし、外国における価格の低落その他予想されなかった事情の変化による輸入の増加がみられた場合、また、それにより国内産業に重大な損害又はその恐れが生じ、国民経済上緊急に必要があると認められた場合に発動されます。
措置内容は、関税引き上げと輸入数量制限で、関税引き上げについては、関税定率法第9条及び緊急関税等に関する政令で定められており、引き上げ後の税額の上限は内外価格差(輸入価格と適正な国内卸売価格との差額)までとされています。輸入数量制限については、外為法及び輸入貿易管理令に基づく経済産業省告示をもって規定されており、原則として直近の適当と認められる3年間の平均輸入数量以上がとられることとなっています。発動期間は原則4年以内、延長しても暫定期間を含む最大8年以内とされています。
一方、特別セーフガードは、ウルグァイ・ラウンド合意において関税化した農産品で、米、小麦、大麦、乳製品などが対象となります。発動要件には数量ベースと価格ベースがあり、数量ベースについては、4月から年度末までで輸入量の累計が輸入基準数量を超えた場合、要件を満たした翌々月から当該年度まで通常関税の1/3の追加関税をとることとなっています。
価格ベースについては、船荷毎の輸入価格が発動基準価格(1986~1988年の平均輸入価格)の90%を下回る場合に発動され、要件を満たした船荷毎に、発動基準価格と輸入価格の差(価格下落率)に応じて、最大で発動基準価格の52%の追加課税という措置がとられます。その他、一般セーフガードとの併用は不可ということ、輸出国への補償措置は必要なく、輸出国の対抗措置は不可ということが挙げられます。
わが国においてはこの4月、ねぎ、生しいたけ、畳表(イ草)の3品目について、セーフガード暫定措置の発動が正式に決定されました。期間は4月23日から11月8日までの200日で、過去の輸入実績を考慮し、一定量を超えた分に追加関税を課す関税割当方式を採用しています。
食料の安定供給や安全な食料の生産、また、国際化に対応するため担い手の育成が急がれる中、今回の発動は緊急的なものであり、生産・流通の改善、消費者の理解と協力を得られる政策の確立が必要となります。このため他の品目についても、発動の要件がある場合は、経済産業省・財務省と協議する事にしています。
(機関誌 平成13年6月号より)