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世界農業遺産(GIAHS)
昨年は、国連が定めた生物多様性年であり、名古屋でCOP10が開催され、本県でもプレイベントやクロージングイベントなどが行われました。そして、今年から2020年までの10年間を「生物多様性の10年」とすることが国連において採択され、石川県でも現在策定中の「生物多様性戦略ビジョン」に基づき、豊かな生物多様性を育む里山・里海の保全を推進していくこととなりました。具体的な取組みとしては、里山創成室の設置、里山創成ファンド(仮称)の創設や新しい里山里海づくりの推進などが検討されており、この施策の一環として能登地域を世界農業遺産「GIAHS」(ジアス)へ登録する取組みが現在始動しています。
このGIAHSとは、FAO(国連食糧農業機関)が2002年から主として途上国向けに始めたプロジェクトで、世界的に重要な農法や生物多様性などを有する地域(サイト)を未来に継承することを目的とした制度です。これまで認定された事例には、海抜4000mの厳しい環境でバレイショ栽培を継承している「古代バレイショ農法」(ペルー)や、先住民が約200種の地域固有のバレイショ栽培と先祖伝来の慣行を伝承している「チロエ農業」(チリ)ほか数ヶ国での取組みがあります。
今回日本からは、能登と佐渡の里山が申請されており、能登のGIAHSは、「能登の里山・里海」(申請者:羽咋市以北の4市4町で結成した「能登地域GIAHS推進協議会」)ということで、千枚田や田の神様をもてなす「あえのこと」(UNESCO無形文化遺産)など、1300年以上続く伝統的な農村文化や稲作を中心に地域在来種の農産物を取り入れた持続的な農業生産システムの振興が対象となっています。一方、佐渡のGIAHSについては、「トキと共生する佐渡の里山」(申請者:佐渡市)として、トキを中心とした豊かな生態系や景観を保全する「生きものを育む農法」の振興が取り上げられています。
本県では、以前からGIAHSの推進に協力してきた国連大学と農林水産省北陸農政局の2機関と連携を図りながら認定に向けた様々な活動を展開して行くこととしています。今後の予定としては、各地で推進フォーラムやワークショップなどを開催しながら認定を待つこととなり、早ければ6月頃に認定されることとなります。この取組みが認定されれば、日本初、かつ先進国としては世界初となり、水田を主体としたわが国農業の国際的なPR、地域生産物のブランド化や観光への活用を通じた農村地域の活性化が期待されることとなります。
能登の千枚田
参考文献
- ARDEC(NO.44)
- 日本農業新聞
- 石川県ホームページ
(機関誌 平成23年4月号より)