石川県土地改良事業団体連合会 水土里ネットいしかわ

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ゼロエミッション

 21世紀を迎えた今日、豊かな社会が実現する一方で、人類は地球の温暖化やオゾン層の破壊、熱帯雨林の減少、砂漠化、酸性雨、海洋汚染などさまざまな地球環境問題に直面しています。

 その中で、資源を無駄なく有効に使うという観点から、「ゼロエミッション」という構想が注目されています。

 これは、国連の目的に学術面で寄与するいわば学者・研究者の国際的共同体である国際連合大学が提唱しているもので、ある産業の生産工程から排出される廃棄物を別の産業の原料として利用する完全循環型の生産システムを指します。簡単に言えば、廃棄物や廃熱として捨てられているものを必ず利用して、無駄に燃やされたり埋められたりしないようにする、つまり廃棄物“エミッション”を“ゼロ”にすることです。その結果、廃棄物処理に伴い発生する温室効果ガスの削減や、リサイクルの際に発生する余熱利用による暖房や給湯、ゴミの固形燃料化などのエネルギー化により省エネルギーも図られることとなります。ちなみに現在国際連合大学が取り組んでいる事業として、ビール醸造業と水産養殖業との組み合わせや、ヤシ油から派生するパーティクルボード事業や海草からのバイオケミカル物質抽出などがあります。

 また、経済産業省では、この構想を推進するため環境省と連携して平成9年度より21世紀に向けた新たなまちづくり計画、「エコタウン事業」を創設しました。その仕組みは、地方公共団体が推進計画(エコタウンプラン)を作成した場合、承認を受けると、ハード面では「環境調和型地域振興施設整備費補助金」により民間等の建設するエコセメント製造プラントやペットボトルリサイクル設備等のリサイクル関係施設整備への助成が講じられ、ソフト面では、「環境調和型地域振興事業補助金」により、環境産業見本市・技術展共同商談会の開催、環境産業のためのマーケティング事業への助成、関連事業者・住民に対するリサイクル情報等の提供等の事業への助成などのメニューから、それぞれの地域の特性に応じて、総合的・多面的な支援を実施するものです。

 近年、地方公共団体は毎年増加する廃棄物に対応しきれない状況にあり、ましてや新たなゴミ処理施設の建設、自治体からの廃棄物の受け入れは困難を極めています。このため、ゴミ減量とリサイクルへの対応が急務となっており、その解決策としてもゼロエミッションが有力なものと考えられます。今まで資源は無限かつ無料であるという考えのもと生産活動を行ってきましたが、これからはその考えを根底から変革していかなければならない時代となっています。

 土地改良関係でも、「循環型農村」の実現に向けて農業集落排水などの熱エネルギーをハウス暖房や路面融雪に再利用する構想もあり、改正土地改良法の中でも「環境に配慮した事業の実施」ということが強調されていることから、環境への負荷が少ないゼロエミッション構想の重要性が今後増していくことと思われます。

(機関誌 平成14年2月号より)