石川県土地改良事業団体連合会 水土里ネットいしかわ

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ダイオキシン

 これまで、水銀、農薬、煤煙など環境汚染の問題が多く取り上げられてきましたが、今「ダイオキシン」に注目が集まっています。

 これは非常に強い毒性をもつ有機塩素化合物で、ポリ塩化ジベンゾーパラージオキシン(PCDD)とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)をまとめて「ダイオキシン類」と呼んでいます。その種類は構造の違いなどから210種類に分かれ、毒性の強さもそれぞれ異なります。例えば、ボツリヌス菌や破傷風菌などといった天然の毒物に比べれば毒性は弱いのですが、人工物質としては最も強く、サリンや青酸カリなどをしのぐ効力を持つものもあります。

 ダイオキシンは、無色無臭の固体で、ほとんど水には溶けませんが、脂肪などには溶けやすいという性質を持っています。また、他の化学物質や酸、アルカリとは容易に反応しない安定した性質を持っており、太陽からの紫外線で徐々に分解されることが解明されています。

 この物質は意図的に作られることはありませんが、炭素・水素・塩素が熱せられる過程、つまり、ごみの焼却や金属精錬の燃焼、また、紙などの塩素漂泊などの工程において発生することが分かっています。

 わが国のダイオキシン排出量は、1年間に約5,140~5,300グラムと試算されており、大都市地域の大気中のダイオキシン濃度は平成8年度の環境庁調査で0.3~1.65pg/m3※ 程度、欧米の0.1pg/m3程度に比べると、日本はかなり高い数値を示していることが分かります。

 大気中に排出されたダイオキシンは、大気中の粒子などと結合し、その後地上に落ちてきて土壌や川を汚染し、そこに生息するプランクトンや魚に食物連鎖を通して取り込まれていきます。そして、最終的にそれを摂取する我々人間にも蓄積されていくことになります。

 これがひとたび体内に入ると、その大部分が脂肪に蓄積されることになり、ごくわずかな量は分解されて体外に排出されますが、その速度は非常に遅く、人間の場合は半分の量になるのに約7年かかるとされています。

 この間、人体に及ぼす作用として、ホルモンと似たような働きによる甲状腺機能の低下、生殖器官等への影響、免疫機能の低下といったことが引き起こされると考えられます。

 また、母乳にもダイオキシンが含まれるということで、胎児への影響についても懸念されていますが、これについては、WHOでも母乳栄養の利点を示す明確な根拠があることから、これを奨励し推進すべきであるとしています。

 このように、今の時点ではその詳しいメカニズムや人体への影響などはよく分かっていないのですが、これから先ダイオキシンによる被害が出てくる可能性は高いと思われます。

 今言えることは、ごみの分別・リサイクルを進め、ごみの量を減らすこと。また、不完全燃焼の状態で発生することが多いということなので、ごみの焼却は高温で行い、排ガスの適正な処理ができる設備の整った施設で処理すること等が対策の一つとして考えられます。

 ※(1pg/m3は、1kの空気中に1兆分の1gのダイオキシンがあることを意味します)

(機関誌 平成11年7月号より)