石川県土地改良事業団体連合会 水土里ネットいしかわ

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地籍調査

 人に「戸籍」があるように、土地には「地籍」があります。戸籍は人に関する記録ですが、地籍は土地に関する記録です。一般に利用されている公図の多くは、明治時代の地租改正事業によって作られた地図(字限図)をもとにしたもので、土地の境界が不明確であったり、測量も不正確であったりするため、土地の実態を把握することが困難な状態にあります。

 そこで、現状に合った正確なものを備えるため、国では昭和26年から「地籍調査」として国家基準点に基づく調査を全国的に実施しています。

 これは、一筆ごとの土地の所有者、地番、地目を調査するとともに、境界の位置及び面積について測量を行い、その結果を地図と簿冊に取りまとめるものです。主な事業主体は市町村となっていますが、都道府県や土地改良区なども実施することができます。

 調査にかかる経費の補助は、市町村が実施主体となって行う場合、国及び県から負担金が支出され、市町村の負担は事業費の1/4となります。このほか、都道府県及び市町村の負担分については、一定の割合で特別交付税が交付されるため、実際の負担はさらに小さいものになります。

 この調査によって得られる効果としては、公共事業の円滑化、住民間や官民間の土地にかかるトラブルの防止、不公平課税の是正といったことが考えられます。

 地籍調査の進め方としては、まず事業主体が事業計画を策定し、事業着手の準備をします。体制が整ったら、段階を追って地籍測量を行い、一筆ごとの土地について公図等により調査するとともに、土地所有者の立会いのもとで境界などを確認し、面積測定を行います。

 以上の調査結果をもとに地籍簿と地籍図の案を創ります。この地籍簿(案)と地籍図原図は、住民に閲覧した後、土地に関する正確なデータとして承認を受けます。

 地籍図、地籍簿は、市町村及び都道府県の内部行政資料ともなり、計画策定や政策立案に関する基礎情報として大いに活用することができます。また調査結果を登記所に送付することにより、登記所では土地登記簿が書き改められ、地籍図が備え付けられます。

 近年では、この地籍調査の結果を数値情報化して管理することが多くなっており、これにより、調査成果を土地に関連するさまざまな行政分野と連携させて活用していくことが考えられます。例えば、農地の管理においてこれまでの台帳だけの平面的な管理から、他の情報との重ね合わせによって、空間的な把握ができるようになり、農地の大規模化、集約化などの農業政策を立案する時に大変参考になります。

 また、地籍調査以外の事業によって作成された図面や簿冊の成果が同等以上の精度と正確さを有している場合は、同一のものとして指定することができ、「国土調査法第19条第5項指定」または「国土調査の成果の認証に準ずる指定」と呼ばれています。

 県内の進捗率は、調査の対象地区の約11%と伸び悩んでいるところですが、市町村における行政の効率化、高度化を飛躍的に向上させるためにも今後の地籍調査の推進が期待されます。

(機関誌 平成12年9月号より)