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農業委員会
我が国の農業・農村が大きな構造的変革の局面を迎える中で、これからの農政を推進するに当たって、地域に密着した活動を展開している「農業委員会」に大きな期待が寄せられています。 農業委員会は、昭和26年に農地を守り有効に活用するための行政委員会として設立されたもので、市町村に設置が義務づけられているものです。この農業委員会を基盤として、都道府県段階には都道府県農業会議、全国段階には全国農業会議所が組織されており、これらを総称して「農業委員会系統組織」と呼んでいます。
農業委員会は、10~30人(特例として40人になる場合もある)の選挙により選出された委員及び市町村長が選任する総合農協並びに農業共済組合の理事等各1人、学識経験者5人以内の委員から構成されており、委員の中から会長1人、同職務代理者1人を置くことになっています。その性格は、市町村の行政委員会であるとともに、公職選挙法を準用した選挙によって農業者から選出された者を中心に構成されていることから、農業・農民の代表機関であるといえます。
農業委員会の担っている役割は法律上3つに区分されており、まず1つに農業委員会だけが専属的な権限として行う法令業務として、農地の権利移動や転用についての許認可を中心とした農地行政の執行があります。これは、地域における土地利用の在り方を踏まえた優良農地の確保が特に重要になっていることを受けたもので、この他にも農業者年金や税制関係の証明事務などが「その他の法令によりその権限に属させた事項」として農業委員会の日常的な重要業務となっています。
2つ目に、任意業務、すなわち農業委員会だけが専属的に行う業務ではありませんが、農業者の利益代表機関として農用地の利用調整を中心に地域農業の振興を図っていくための業務を行っています。各市町村の基本構想の実現に向けた認定農業者の育成と、農地流動化の加速への取り組みが特に期待されており、併せて農業及び農業者に関する調査研究や情報活動も、それぞれの地位向上を図るといった点から重要な任務となっています。
そして3つ目には、意見の公表、建議及び諮問に対する答申の業務です。これについては、農業委員会の行政機関としての性格よりも、農業者の利益代表機関としての性格を前面に出したものといえ、農業委員一人ひとりが地域の農業者の声を積み上げ、農業の発展に結び付けていく大切な取り組みの一つといえます。
今、農業・農村が多様化するなかで、地域の実情に応じ、集落単位を基礎とした地域関係者の意向を反映した農業と土地利用の再編が必要とされています。この点において、集落に居住している農業委員が地域の世話役・相談役として果たすべき役割は大きく、「農業者の代表」としての自負と責任感に基づいて地域農業の将来展望に向けた活動を行うことが期待されています。
(機関誌 平成11年8月号より)