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不動産登記法の改正
不動産登記法が明治32年の制定以来105年ぶりに全面改正され、昨年3月7日から新不動産登記法のもとで登記が行われていますので、主な改正点について説明します。
「登記原因証明情報」の必須化
今回の改正では売買による所有権移転や担保権の設定にあたり、登記を申請する原因となった契約や事実を正確かつ具体的に証明する書面(「登記原因証明情報」と呼ばれる)を添付しなければならないことになりました。従って、売主等の登記義務者は、司法書士宛の委任状に加えて、「登記原因証明情報」への記名押印が必要になります。
また、当初の売主から買主の変遷を省略して直接最終の買主へ所有権を移転する「中間省略登記」は、適切な登記原因証明情報が添付できないので事実上不可能になっています。
オンライン申請の導入
これまで、登記申請の際には登記申請人かその代理人が必ず登記所に出向く必要がありました。今回の改正によりインターネットを利用したオンラインによる登記申請が可能となりました。このオンライン申請は住民基本台帳ネット利用者に限定され、かつ、登記申請に必要な書類の電子ファイル化と、印鑑を押す代わりの電子署名が必要になります。
また、オンライン申請は平成18年7月までに約150箇所の登記所で運用が開始され、5~6年以内には大半の登記所で可能となる予定です。石川県では、金沢地方法務局の金沢本局、金沢西出張所、小松支局の3登記所で運用されており、8月上旬には七尾支局も運用が開始されます。
登記済証の廃止と登記識別情報の創設
従来、登記が完了すると「登記済証」(法務局の「登記済」という公印が押印されたもの)が交付されていました。現在発行されている登記済証は、所有権を全部移転するかその所有者が亡くなるまでは有効ですが、登記所がオンライン申請の指定庁になると、新たに所有者になる人から登記済証は廃止され、「登記識別情報」(12桁の英数字からなるパスワード)の通知と登記完了証の交付が行われます。
パスワードは書面に目隠しシールが貼られており、一度はがしてしまうと再度目隠しをすることができないので管理がとても重要になります。パスワードを他人にコピーされたり紛失した場合は無効にする手続きがあり、この手続きを取った場合、次回の登記申請の際に原則として厳重な本人確認手続きがなされます。
保証書制度の廃止と本人確認制度の創設
登記済証は一般的に権利書と呼ばれ、登記の権利者であることを証明する書面ですから、不動産登記申請に添付しなければなりません。登記済証を紛失した場合、司法書士等が「保証書」を作成して登記済証の代わりに添付することで登記申請が可能でしたが、この制度は廃止されました。
これに代わるものとして法務局が厳重な本人確認と登記申請意思の確認を行う「事前通知制度」がありますが、今回の改正で、司法書士や弁護士等の法律で定められた代理人が法務局に代わって上記の確認を行う「本人確認制度」が創設されました。
最後に
新不動産登記法は始まったばかりです。オンライン申請などは大きな改正点ですが、実際に普及するまでには時間がかかると思われます。廃止されることになった登記済証も、紙申請による登記所では当分の間、登記済証が作成されますが、登記原因証書や申請書副本の制度が廃止されたことから、従来とは異なるものになります。
不動産の権利の迅速な公示、確保に最適な登記申請方法は、登記申請をする登記所や申請内容によっていろいろに分かれることになりますので、司法書士等の専門家とよく相談することが重要になります。
参考
(機関誌 平成18年7月号より)