お知らせ一覧
誘導雷対策
毎年、梅雨時期や台風の季節になると、各地で水害など様々な被害が見られますが、その中の一つに雷による被害、いわゆる「雷害」があります。
これは、文字を見て分かるように雷によって電気設備が故障する障害をいいますが、例えば、下水処理や排水機場のポンプなどに落雷し、機能が停止しその地区の排水対策に大きな影響が出ることが挙げられます。石川県内でも、2、3件被害にあった例も見られます。
こうした施設は、20年以上前においてはリレー(保護継電器)や真空管等を利用した機器が多く、雷に対し比較的強かったのですが、近年の多機能、小型、省エネ化された電子機器においては、ICなどが幅広く使用されているので影響を受けやすくなっているのが現状です。
この雷害が起こる経緯を見てみると、まず、雷が発生すると、電源線や電話線のような屋外ケーブルに高電圧の衝撃波が発生する場合があります。この高電圧衝撃波は、電気の津波のようなもので、雷の誘導現象によって間接的に発生する事から、「誘導雷サージ」と呼ばれています。この誘導雷サージには発生原理により静電誘導によるものと電磁誘導によるものがあります。
前者の方は、雷雲下部の電荷によって、ケーブルに雷雲電荷と反極性の電荷が誘導されます。そして、雷放電により雷雲電荷が消滅すると、ケーブルの誘導電荷はその拘束を解かれるため、一瞬にして元の状態に戻ろうとします。
一方の電磁誘導による雷サージは、落雷電流により発生する強力な磁力線によってケーブルに逆起電力が誘導されます。これが雷サージとなります。
その誘導雷サージの対策として、確実であり簡単な誘導雷対策である避雷器の設置は、機器に侵入しようとする誘導雷サージを減衰させて、機器を保護しようとするのです。避雷器が動作すると、誘導雷サージは減衰しますが、完全に消滅するわけではなく、いくらかのサージが残留します。これは残留サージと呼ばれ、機器側に通過しますが、機器が耐え得る範囲内に抑えられていれば、機器は保護できます。ここで、その避雷器の方式として、一般の避雷器は、誘導雷サージの圧力を減衰させて機器を保護しようとする「電圧減衰方法」を採用しています。
この方式の避雷器が電子機器を保護するには、避雷器の残留サージ電圧<機器のサージ耐力を満足する必要があり、電圧減衰方式の避雷器性能には、限界があります。しかし、今注目される方式として、「エネルギー減衰方式」による対策があります。たとえ残留サージ電圧が大きくても、電流及び時間を小さくさせれば、サージエネルギーが小さいため、急な雷サージに対しても高速に動作し、寿命も長く、接地からの逆流サージが侵入しにくく、また、連続雷に対しても確実に動作するという特徴を持ちます。よって、エネルギー減衰方式は、あらゆる機器に対応できるということが言えます。
以上のような方法を考慮に入れて、雷害に備えていきたいものです。
(機関誌 平成12年7月号より)