石川県土地改良事業団体連合会 水土里ネットいしかわ

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FTA(Free Trade Agreement:自由貿易協定)

 世界規模の貿易自由化を推進する世界貿易機関(WTO)*とは違い、二国間または複数国間の加盟国で締結する貿易上の取り決めで、加盟国域内の関税や輸出入制限などの関税によらない貿易障壁を撤廃する協定をいいます。

 現在、WTOは2001年に加盟した中国を含め140以上の国・地域が加盟しており、その多くが途上国です。特に先進国主導でこれまで進んできたグローバル経済の進展が、必ずしも自分たちにとって有利なものではなかったとの不満をもつ途上国は、自由化に対する消極的姿勢を強めつつあります。加えて、WTOがウルグアイ・ラウンドの結果、そのカバーする分野を飛躍的に拡大したこともあり、加盟国間の利害調整が複雑化し、新たな課題やルール策定に迅速に対応することが困難となっています。1999年には米シアトルでのWTO閣僚会議が失敗に終わるなど、新しい貿易交渉の開始も遅れています。このような状況を背景に90年代に入ってからは、GATT/WTOによる多角的貿易化の進展を危惧した加盟国が、FTAを積極的に結ぶ動きが活発化しています。 日本も2002年1月にシンガポールとFTAを締結、本年3月にはメキシコと締結に合意しました。両国はこれまでに地域横断的なFTAを結び、モノと情報のハブ(中心)国となることを通商戦略として目指してきました。わが国にとっては、シンガポール・メキシコが持つ自由貿易協定網を利用して欧米市場に参入しやすくなるなど、貿易の拡大・深化に企業は大きな期待を寄せています。

 また、メキシコとの協定では、農産品分野を含む包括合意にメドがついたことで、現在、交渉を進めている韓国や東南アジア各国との取り組みにも弾みがつきそうです。コメ・鶏肉・バナナを始めとする農産物のほか、タイではタイ式マッサージ師、フィリピンでは看護師や介護士の入国を容易にするなど、労働市場の開放を求めていることから、今後は農林水産物分野のみならず国内の非効率な部門の改革を進めることがますます必要となってきます。

 日本は従来、GATT/WTO体制による貿易自由化の恩恵を受けてきたことから、世界的な多国間協定による自由で無差別な貿易体制の整備を基本に据え、FTAの広がりを警戒してきました。しかし、現在ではFTAがWTOの多国間交渉を補完し、さらにその交渉を促すことができるならば、貿易の自由化は一層進み日本経済の安定発展に寄与するものと期待されています。

(機関誌 平成16年4月号より)