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生きものマーク
以前は当たり前にいたトンボやホタル、さまざまな魚たちが、少しずつその姿を消しつつあります。このような中で多くの生きものが暮らせる豊かな環境を取り戻すことが求められており、その取り組みの一つとして、農林水産省が推進する「生きものマーク」があります。
これは、生物多様性の保全に配慮した取り組みによって生産された農林水産物であることを、地域の代表的な、又は身近な生きもの等を通じてアピールする新しい取り組みです。「マーク」といっても、必ずしもラベルを農産物に貼ることを条件としているわけではなく、産物等を活用しての発信や環境教育などの活動を総称し、こう呼んでいます。
主な取り組み事例としては、兵庫県豊岡市の「コウノトリ育むお米」があり、同市では、かつて絶滅したコウノトリが生息できる環境をつくろうと、水稲を無農薬や減農薬、減化学肥料で栽培し、とれた米をブランド化して販売しています。
マークの設定について
この取り組みは、特別な認定要件や資格は必要ありません。これまでの取り組み事例を見てみると、農家やNPOなどが自治体と連携しながら行うパターンが多く、
- 身近な生物を「見つける・はぐくむ」、
- その取り組みの中からブランド化された産物を消費者に「届ける・伝える」、そして、
- 取り組みを継続・発展していくため、生産者、行政、地域住民など様々な分野の人たちと「分かち合う・広げる」
といった3つのステップを踏みながら進めることとなります(図1「進め方の一例」参照)。
国内・県内の事例
国では、平成21年度に全国の事例を調査し、今年3月に「生きものマークガイドブック」を作成しました。ここでは、現在全国で取り組まれている事例や、活動を実践に移す際の要点が紹介されています。なお、ガイドブックに掲載されていないものも各地にはあり、県内でも、金沢市小豆沢地区、津幡町上野地区、かほく市八野地区で実施されている食料供給基盤保全管理対策支援事業のなかで、水稲食味解析や生きもの調査などを通して良好な環境でとれる高品質の米をブランド米としてPRしていくことなどが検討されています。
最後に
10月に名古屋市で開催されるCOP10でも、農林水産業の営みを通じた生物多様性が重要なテーマの一つとなっています。地域で生態系が健全に保たれていることの証明にもなるこの生きものマークの取り組みは、生物多様性保全においても重要な役割を果たしていると言え、今後各地において活動が展開されることが期待されます。
(機関誌 平成22年7月号より)