石川県土地改良事業団体連合会 水土里ネットいしかわ

いしかわの農業用水めぐり

小橋(こばし)用水


元町第三児童公園横を
流れる用水


用水の恵みを受ける
受益地(千田町)

 金沢市のほぼ中心部を流れる小橋用水は、浅野川から取水し、浅野本、乙丸、高柳、田中、千田の5町と、沖、小橋、中島の3町の一部の水田を潤している。

 用水が造られることとなったいきさつは、城下町金沢の防衛及び都市用水のためだと言われている。

 慶長4から16年(1599~1611)にかけて金沢城を中心に内堀と外堀が掘られた。さらに元和年間(1615~1623)には、犀川、浅野川の護岸工事が行われ、その前後に御堀に流れ込む辰巳用水、大野庄用水、鞍月用水が整備された。続いて大正年間(1573~1591)には、中村高畠用水、そして元禄年間(1688~1703)に今の小橋用水と中島用水が造られた。

 用水の取り入れは、小橋町の浅野川右岸に取水口が設けられており、用水名の由来ともなっている「小橋」の上流側に位置している。下流側には中島用水の取水口があり、両用水がそれぞれ調整をとりながら取水している。

 その調節を行っているのが橋のすぐ下流にある小橋可動堰である。以前は、蛇籠であったり木工沈床であったりしたため、大水の度に壊れ、村人が修理にあたっていた。そこで昭和35年にコンクリート堰に改修されたが、水流が停滞し、悪臭の原因となったため、昭和57年に今の可動堰に再度改修された。このほか魚道も設けられることとなり、平成13年度末までに完成する予定である。

 小橋用水は、農業用水としての役割だけでなく、地域の生活に溶け込んだ存在ともなっている。

 今は小橋町の一部となっているが、以前“水車町”と呼ばれた地域では、小橋用水にかかる水車で松任から来た油屋が菜種油をとっていたといわれている。また、昭和32年頃までは小橋町の各家の前に“コウド”(階段)があって、洗濯場になっていた。現在も、防火用、消雪用として地域住民の生活において重要な役割を果たしている。

 小橋用水のかんがい面積については、かつて2,826石(約187ha)あったが、近年においては、市街化などが進み、現在は96haとなっている。また、用水総延長は6.5kmとなっており、取水口から小橋町市街地は石積護岸であったが、昭和35年の取水施設の改修と同時にコンクリート暗渠となり、下流も市街化されるとともにコンクリート三方張水路に整備された。

 なお、用水が流れる途中に元町第三児童公園があり、子供たちが水遊びできるようになっているほか、動く水車も見ることができ、かつての面影を忍ばせている。

(平成13年9月)